ライターという職業を料理人に例えてみた
職業を聞かれて「ライターです」と答えると、ほとんどの方が「へ~文章を書くお仕事なんですね」と仰いますし、中には「文章書くなんてスゴイね~。私は読書感想文にも苦労したから」とか「よっぽど文章が上手いんでしょうね~」なんて仰る方もいます。基本的にライターなので当然ながら文章は書くのですが、なんとなくこう言われるとライターとしての仕事の曖昧さに自分でもモヤッとしてしまいます。
ライターは文章を書く仕事。ほんとうにそうなの?それだけなの?
そこで自分自身のためにも、ちょっとわかりやすく仕事内容をまとめてみたいと思います。
私は今まで編集の仕事をしながらライティングも行なってきました。芸能人や作家の方へのインタビューやタイアップ広告の担当をしていた時期もありますが、現在は飲食店にまつわる記事のライティングを主な仕事にしていますので、日々、シェフや店長、企業の総務の方などからお話を伺う機会があります。なので、ふとライターの仕事を料理人の仕事に例えてみるとわかりやすいかもしれないと思い付いたので、まあ聞いてください。
レッツトライ!
①仕入れと仕込みが大切!
こだわりをもったお店のシェフは、たとえば毎朝市場へ出かけたり、安心できる契約農家の方と提携して食材を仕入れます。鮮度や脂ののり方など食材の目利きの力も大事。今まで自分が修業してきたお店から仕入ルートを紹介してもらったり、実際に自分で開拓することもあるでしょう。さらに仕入れた食材は、丁寧に殻を剥いたり、骨を取ったり。下処理や仕込みにも手をぬきません。
ライターの仕事もまず、この「ネタ」を仕入れるところから始まります。インタビューをするのであれば、取材相手やテーマについて調べ、インタビュー内容を考え、必要があれば取材シートなどを作成して実際に相手と会ってテーマに沿った内容を聞きだします。もちろん書面や電話でやりとりする取材もありますし、直接の接触はなしで貰い資料から文章を起こすときもあります。いずれにしろ、事前に資料を読み込んだり、不足があればほかの資料にもあたるなど下調べが必要で、何を核にして原稿を書くのが、その材料をきちんとそろえなければいけません。
②下ごしらえから調理まで。実はココが腕の見せ所?
さて、食材がそろったら料理人はその食材にあうメニューや調理法を考えるでしょう。旬の鮮魚の味わいを活かすには、そのままカルパッチョにしてもいいし、皮はパリッと身はふんわりと焼き上げるポワレもいいかもしれません。そこはお店のコンセプトやお客様のニーズ、シェフの個性も入ってくるところ。
ライターの仕事なら、この工程は構成やキャッチコピーを考える部分になるでしょうか。限られた文字数の中で、どの情報を頭にもってくるか、どう紹介すべきか、シリアスに書くべきか、少しユーモアをまじえるべきか、題材や読者層にあわせて考えます。実は読み物というのは、説明の順番、つまり構成こそキモだと私は思っているのですが、組み立てによって分かりやすさや面白さは変わってきます。そこが難しく悩ましい、でも楽しくもありますね。
③いよいよ、盛りつけ。つまりこの工程が…?
さあ、料理が仕上がりました。料理人はこの後、お皿に盛り付けをしていくでしょう。いかにも洗練された前衛アートのような一皿になるか、素朴だけどほっとする一皿になるかは、料理人のセンスや意図次第。
ライターの仕事でいうと、ここがまさに「文章を書く」という部分かと思います。文体や使う用語、漢字の多さ少なさまで、媒体によってさまざまですが、今まで手に入れて組み立てた材料を紙の上へ(といっても今はPC上へが多いでしょうが)読者へ向けて盛り付けていくわけです。
以上が、ざっくりとしたライターという職業の説明でした。もちろん、料理人といってもジャンルやお店の方針などによっていろんなやり方や、気を付けるべきポイントがあるのと同じように、ライターと一口に言っても一般紙か専門誌か、扱う題材によっても変わる部分はあるでしょう。
しかし、①と②がいい加減なお店に積極的に行きたいと思うでしょうか?こう見てみると、実はライターの仕事として一番イメージされる③は、実際のところそう上手い必要はないことがお分かりいただけるでしょう。私も自分の文章が上手いなどとは、とてもじゃないけれど思ってもいません。もちろんおいしさが伝わるような盛り付けは大切ですが、盛りつけだけが素晴らしくてもそれは安心できるおいしい料理とイコールではない。ライターもまさしく同じで、どのような内容の原稿であれ、①と②が粗雑だと信用できる内容にはなりません。③ばかりを練習しても、ライターの仕事を受ける上ではあまり意味はないということになります。
こうして書いてみると、冒頭にお話しした「読書感想文も書けなかったわ」という人は、いきなり白紙の原稿用紙に鉛筆をもたされて悩んでしまったのだろうなと思うのです。大切なのは、文章よりもまず、その本のどのフレーズが心に残ったのか、主人公と自分に共通するところはあるかないかなど、先に考えて材料をそろえる作業。そうしてはじめて、ではそれをどんな順番で書いていったらいいかな、という構成に移り、ようやく書き進められることになるわけです。私の経験上ですが、文章を書く前の①と②の作業が上手くいけば、③で深く悩みすぎて筆が止まることはほとんどありません。
そうさ、①と②があってこそ、③があるのさ!
※上記は、あくまで私自身の経験からざっくり書いたもので、もっと違うジャンルの方にとってはまた違うコツやポイントがあるかもしれません。
でも、「ライターってどんな職業なの?」と漠然と思っている方や、これからライターをめざしてみようかな、という方。あるいは文章が苦手で困っている、という方の参考に少しでもなればいいなと思っています。まあ、私も毎日、試行錯誤状態なので大きなことは言えませんけどね…。
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