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2016/10/29

「アウトロー近世遊侠列伝」を読む

高橋 敏編「アウトロー近世遊侠列伝」を読みました。
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幕末を駆け抜けたのは志士だけではありません。
無宿人や博徒、侠客と呼ばれた江戸時代のアウトローもまた、幕末の動乱期に善悪両面において大いに活躍(?)していました。実は、彼らは犯罪者や犯罪者予備軍と恐れられていただけでなく、幕府組織の末端を支える重要な役割も担っていたのです。悪は悪をもって制すという考えがありますが、時に彼らは代官の手先となったり癒着したりして、悪党ながら江戸近郊の治安維持のためにも働くという二足の草鞋を履くこともあったとか。

清濁入り混じる当時の社会の一面、そして講談や芝居でお馴染みの悪党たちの真実の姿が面白い。捕まっても島抜けはする、ぼったくり居酒屋を開く、役人らと大立ち回りを演じる、彼らを助ける女パトロンも現れる、磔(はりつけ)になるのに歌舞伎の二枚目に扮装した衣装で役人たちに護送される…。一つ一つの史実エピソードが、これはもう講談師がハリセンを叩かねば始まらないという話ばかり。

また幕府(お上)に不満をもつ村人たちにより、多くの指名手配犯が匿われた事実も。蛮社の獄で捕まりその後脱獄した思想犯・高野長英も一時期下総の国で匿われていましたが、それもかの地にはそういう環境があったということで、当時の実情がいろいろと明確に見えてきて興味深いところです。

島送りになった罪人が島から脱出することを島抜けといいますが、それがどのように行われたのか。また、無宿者は宿無しという意味ではなく人別帳から外された者を指しますが、彼らはその後どのように過ごしていたのか。知れば彼らが物語の中の人物ではなく、一気に生々しく実在の人物として浮かび上がってきます。本の中には、彼らの死亡年齢や死因などもまとめられていますが、好き勝手にドラマのような人生を生きているように思えてその実、わざわざ苦労の多い道を選んでいるとも見えるのがなんともかんとも…。

お馴染みの国定忠治はもちろん、鳥も通わぬ八丈島から抜けた佐原喜三郎、戊辰戦争で赤報隊へ入隊した黒駒勝蔵、武州世直し一揆を鎮圧した博徒の小川幸蔵などなど、泣く子もだまる大親分たちが勢ぞろい。
この先は、ぜひ本書で!


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<小川幸蔵についてはこちらでも>
本書の小川幸蔵のページを担当されている高尾善希先生のブログにも、幸蔵の逸話が掲載されています。

<侠客好きならオススメ!>
特に映画の時代劇をもとに、当時の侠客と時代をさぐるかっこいいノンフィクション。
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