2015/05/14

二胡と胡弓と浮世絵と

◆今回は、二胡と胡弓のちがい。そして江戸時代の胡弓が描かれた浮世絵についてのお話です◆

二胡と胡弓の合奏、という面白い動画を見つけました。
向かって右側が二胡、左側が胡弓です。



二胡の胴が見えづらいので、二胡単体の演奏も。
上記は中国の伝統曲でしたが、「情熱大陸」などいかが。



胡弓単体の演奏はこちら。



二胡と胡弓は同じものと思われがちなのですが、これを見てもらえば一目瞭然。
似てるところもありますが、異なる楽器だということが、お分かりになると思います。

せっかくなので、私の二胡をご覧ください。

二胡1

特に分かりやすいのは、胴部分。胡弓はまるで三味線のような形ですが、二胡は六角形(八角形などもあるが基本的には)の筒です。

二胡3

さらに動きを見ると、二胡は竿をまったく動かさず、胴をしっかりと膝の付け根に置いています。
そして右手の弓は、出来る限りまっすぐに動かす。
詳しくいうと、二胡は二本の弦の中に弓毛を挟んでいて、簡単に言えば、内側の弦(内弦)をこすると低い音が、外側の弦(外弦)をこすると高い音がでます。

二胡2
内弦と外弦に挟まれた弓毛(馬の毛)。


胡弓のほうは竿をくるくると動かして、右手の弓を弦に当てていますね。
弦は、3本から4本(5本ということもあるようですが)。
二胡とはちがって、ヴァイオリンのように、弓と本体は別々に離れています。

私は約2年前から二胡を習い始めましたが、その前はやっぱり二胡と胡弓を混同していました。
二胡をさして「胡弓っていいよね~」なんて言っていました。
近くには「胡弓教室」と看板に書いていて、実際は二胡教室というところもあります。
これは教室が間違っているわけではなくて、胡弓という言葉のほうが、日本人にはなじみがあるだろうということかもしれません。
あるいはあえて胡弓という言葉を、二胡も含んで異国風の擦弦楽器くらいの、広義にとらえている方もいらっしゃるのでしょう。

さて、この胡弓という楽器、私は実際に弾いたこともありませんし、詳しいわけではありませんが、調べてみるとどうやら江戸初期から現れたようですね。
日本だけのもので、中国やほかの国にはありません。
由来は諸説あるようですが、先日、私の二胡の先生と雑談中に、「胡弓はどうみても二胡というより三味線に近い。西洋の楽器を見た長崎あたりの人が、三味線を改良したりして作ったんじゃないか」なんて話していたくらいで、私もそんな風に感じます。

江戸時代の浮世絵にも、わりと多く描かれているようです。音楽を楽しんでいた雰囲気が伝わってきて、二胡を習いだしてから、とくにこういう演奏中の絵に目がいくようになりました。

英泉胡弓
(1)渓斎英泉(1790~1848年)作。琴、三味線、胡弓(または尺八)の合奏を、「三曲合奏」というそうです。

三曲合奏2
(2)これは喜多川歌麿(1753~1806年)作。女子たちがイケメンの吹く笛にうっとりしてますね。胡弓はどこかな…?

春信胡弓
(3)鈴木春信(1725~1770)が描く二人。教えてあげているところなんでしょうか。演奏どころじゃない気がしますね。

三曲合奏1
(4)もうこうなると何が目的かわかりません。石川豊信(1711~1785)作。
ちなみに石川豊信は、上記の鈴木春信に影響を与えたといわれている人だそうで。ほーなるほど。

さて、現在(2015年5月)、杉浦日向子原作「百日紅」が映画化されて注目されている、北斎の娘・お栄の肉筆画にも「三曲合奏図」があり、胡弓が描かれていますね。

三曲合奏図

画面真ん中の琴を弾いている女性は、遊郭の女性。右側の三味線は、芸者さん。そして左上の胡弓を弾いているのが、町娘。実際にこのような階級のちがう女性たちが、一堂に会して合奏することは難しいので、お栄の想像により、あるいは何らかのテーマをもって描かれているのだろうといわれます。
私は以前、展覧会でこの絵を目にしたことがありますが、細やかな着物の柄やグラデーション、楽器を弾く手つきなど、細部にまで注ぎ込まれた尋常ではない集中力を感じました。
胡弓をもつ町娘の手や恰好は、かなりデフォルメされている感じがしますが、胡弓の竿をくるくると動かしながら弾く様子がよく伝わって来るなと思います。この絵から、音が流れたら楽しいだろうなあ。

------------------------------------

北斎の娘・お栄については、先ほど発行されたばかりのこちらの本に詳しいです。
『北斎娘・応為栄女集』久保田 一洋 (著)
北斎娘・応為栄女集

画集だからか、いきなり絵の細部についての説明から始まるので、予備知識がないと少し唐突かもしれません。
最初に、お栄の人となりや、北斎の代筆もつとめていたとされること、その時代の絵師についてなど、さらりとでも説明があったほうが良かったなーと思いました。
しかし巻末には、しっかりとお栄に関する論文や資料が掲載されているので、興味がある人にはオススメです。江戸時代の胡弓の話も、最初のほうに詳しく出てきますよ。
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。